コラム

クジラの世渡り

第25回 いつでもどこでも自己主張

時間に対する考え方が違うことで、その関係の作られ方も大きく違ってくるということは既に述べた通りだが、このことは人物自体に対する評価にもずいぶん影響してくる。電車の中でアメリカ人グループをウォッチングした日本人の知人がこう言った。
「とにかく声が大きいんですよね。僕はこう思う、いや僕はこうだと、とにかく自己主張しまくっている。いったい何の論争がはじまったのかと耳を傾けてみますとね、クディラさん……なんと、どこのディスカウントショップがいちばん安いかって話なんですよ。あんなに大声で言い張ることですかねえ」

確かに日本人からみると、バカでかい声で話をして、とヒンシュクものであろう。
だが、短時間で自分を理解させなくてはならないアメリカ人は、自信をもって主張をしなくてはならないのだ。
声量が豊かなのは自信の表れ。低い声でボソボソと話すのは自信のないせい、やましいところがあるからだ、という発想なのである。企業などでも、新人を採用する際、日本人とアメリカ人のマネージャーの間で評価が大きく異なることが多い。大声で自信たっぷりに身振り手振りを交じえながらオーバーに話す人に対して、日本人はどうも嫌悪感を抱くらしい。
大言壮語ばかり言って信用できない奴だ。謙遜を知らない。調子がいいだけじゃないか。あんな奴を部下にもったら、こっちが圧倒されちゃって……となる。

日本社会では、寡黙で慎重な人、周りとの調和を第一に考える人が高い評価を受けるのだから、こんな思いももっともなのだが、アメリカは30分一本勝負の世界だ。
一刻も早く自分を印象づけ、売り込んだ者が勝ちなのである。
アメリカ人の前では、みなさんも、アグレッシブなビジネスマンを演じたほうが受けがいいこと間違いなしだ。紺やダークグレーの消極的背広を脱ぎすてて明るい色に挑戦してみるのも、自分を解放させるのに役立つかもしれない。
明るい色のほうが積極的な印象をうけるとアメリカでは言われているのだ。せめて視覚的に訴えるところからでも、アメリカ社会に攻めこんでみてはいかがだろうか。

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