コラム

クジラの世渡り

第28回 冗談にほどはなし

「ハーイ、社長」
と日本人社長がアメリカ人社員から言われたら、なんて非常識な、とムッとすることだろう。馬鹿にされているとも思うだろう。

しかし僕なら、アメリカ人特有の「ハーイ」に込められた親近感と、日本社会に溶けこもうと名前でなく役職名で呼ぶことにした彼の思いを察することができる。しかも異質なものをうまく取りまぜて呼びかけてみた彼のユーモアは理解できる。

一般に日本では、ビジネスとユーモアは両立しない、時と場合を考えなさい、という常識が幅をきかせている。
会議中に厳しい対立が生じたとき、
「違うでしょ!」
などと流行のギャグでも飛ばそうものなら、何て不謹慎な奴だと大目玉を食らうに違いない。

これが、アメリカ人の場合だと大違いである。
ちょっと相手を笑わせることは場を温め、緊迫感を取り去ることになる。相手に笑顔を作らせることは、こちらの気持ちを受け入れやすくさせることにもつながる。
アメリカでは、大統領なども国内演説では冒頭にユーモアを交じえて話を切り出す。まず聴衆をなごませて、政策を受け入れてもらおうというのである。

ビジネス場面でもユーモアは必須で、会議でもカクテルパーティーでも、あちこちでジョークが飛び交っている。仕事もユーモアもごちゃごちゃ、時と場合はないのである。パーティーを考えてみても、日本ではパーティーの最中に取引先の顔見知りと真面目にビジネスの話をしたりするが、アメリ力人は逆にこれを嫌うのである。
日本的真面目さが、この場合はまったく通用しないことを心得ておくべきだろう。

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