コラム

クジラの世渡り

第57回 誕生日には花を買って

「じゃあアメリカ人に何か贈りたいときはどうすればいいんですか?」特別な心得があるわけではないが、交際上手になるためにはやはり多少の注意が必要だ。まず第一に、初対面の相手を訪ねるときには手ぶらでよいということだ。これは日本の習慣と反対だが、アメリカ人には「あいつ、人を訪ねてくるのに手ぶらで来たぜ」などと非難がましく言う感覚はまったくないので心配ご無用。もしどうしても手ぶらで行けないというのであれば、「ほどほど」を心がけて欲しい。たとえば、あなたがアメリカ人の家に招かれた場合、その家の奥様に花束を贈るとか、食事も共にする予定であればワインを一本持参するとか、子供がいる家であれば絵本や玩具をあげるという程度がよいだろう。そうした贈り物なら相手も迷惑とは思わず、その日の食卓を飾ったり、賑わせたりすることができる。しかし、あくまでも程度をわきまえることが肝要。

これが会社を訪ねるという場合になると更に注意が必要だ。会社によっては贈答品に対して厳しい規制を設けているところがある。それを知らずに日本式でいこうとするとかえって信用を失うことになりかねない。たびたび訪問して会社の事情に通じてから、規制にひっかからない程度のプレゼントをするならいいかもしれない。ただしその場合も、個人に贈るのは控えたほうがいいだろう。時計、花瓶、絵などのような会社に対するプレゼントにしておくのが無難である。「どうも難しいなあ。こっちには何の下心もないのに……」個人としては確かにそうかもしれないが、あなたがある企業の肩書を背負っているかぎり、何かしらの思惑があるものとかんぐられても仕方がない。ただ、こんな場合もある。海外に販路を拡大しようというとき、お土産として自国の名産品を持参するようなケースだが、これは僕でもするし、相手も「外国」からのお土産として自然に受け取ってくれる。これは自己紹介の意味に当たるからだ。また、新しい工場が完成した、オフィスを開いたなどという場合、アメリカでも企業間のプレゼントをする。きちんとしたお祝いの記念だからだ。

とはいえ、個人的なプレゼントを喜ぶ気持ちは僕たちアメリカ人も同じである。だから、あなたが親しくなったアメリカ人の誕生日や結婚記念日に何か贈ることは一向に構わない。目的があり、しかも個人に対して贈るのだということがはっきりしているからだ。日頃から相手の好みを研究し、とりわけ好きな花があることがわかったら誕生日にその花束を届けるなどというのは、贈り手の人柄をしのばせる素敵なプレゼントであろう。金、かね、カネの人間だなんて思われない素敵なプレゼントを、さり気なく渡せるようになったとき、あなたの国際人度も成熟したと言えるかもしれない。

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